2013年4月1日

新建築2013年4月号:展覧会レポート ス・ドホ|パーフェクト・ホーム

本日より発売されている「新建築 2013年4月号」 に記事が掲載されました。
展覧会レポート:ス・ドホ|パーフェクト・ホーム に寄稿しています。

自分の仕事が非常に忙しい時期だったので、寄稿依頼を引き受けるかどうか、物凄く悩みました。
ただ、ス・ドホの作品は空間の話と連動しているので、金沢21世紀美術館の空間性の話が不可欠と思い、21美の成り立ち
から知っている自分が書きたいという衝動にも駆られ、寄稿を引き受けることにしました。
展覧会を担当されていた学芸員の方は美術館建設時からのおつきあいなので、いろいろとお話をお聞きしながら文章を
組み立てていったのですが、とても面白いお話もお聞きできたので、非常に有意義な機会となりました。

文字数の制限で省かねばならないことがたくさんあって、文章としてまとめるのがなかなか難しかったです。
機会があれば手に取ってご一読いただければ嬉しいです。(裏話など聞きたい方は個別にご連絡ください。笑)


ス・ドホ|パーフェクト・ホーム

金沢21世紀美術館の展示室はそれぞれ特徴的な空間的特性を持ち、展示を巡ることでその展覧会に固有のストーリーを紡ぎだす。 韓国・ソウル生まれの作家/ス・ドホは、1/1スケールで時空間を体感出来るという自らの作品性と展示室の空間的特性を的確に捉え見事に空間を作品化してみせた。

ス・ドホの作品の中で近年注目されているのは「空間をスーツケースに納めて運ぶ」という発想から始まった作品。 光を通す半透明な薄い布で、自身が住んでいた家や、階段や廊下、門などといった、内と外あるいは公と私を分け隔てる境界をかたどるもので、作品の中に鑑賞者が入り込み、実際に空間を体感することができるのがその特徴である。

物質が半透明の布に置換されて抽象化されることにより、内と外の概念が非常に曖昧になり多層的な関係性が浮かびあがる。やがてそこに存在する人間や空間も取り込まれ作品化される。布の質感を感じさせないテンションや精緻なディテールも抽象性を増す一因となっている。ス・ドホは美術館開館当初から個展を熱望していたそうだが、作品の完成度も増した現時点の作品の状態こそが、展示空間の抽象性と程よく調和しているように感じられる。

かたや、具象性の高い1/5スケールの精巧な模型も展示されている。 自身が住んだ世界各地の「家」について言及した作品のひとつで、これらの作品は自らのアイデンティティに関わる疑問の延長線上にあるとのこと。 同美術館の中でもとりわけ特徴的な円形平面の展示室に置かれているのが特別な何かを示しているようで非常に興味深く感じられた。



 

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